17. oktober 2009
THE都市伝説ホテル②
第一夜
休みが取れるOとSは、Kとあたしよりも1日早くソウルに行き、1日遅れて後からあたしたちが同じホテルに入り、同じ便で帰ってこられるように手配した今年の三段腹の会夏旅である。
おかげさまで1時間から有給が取れる仕事のため、ギリギリまで働いて16時に職場を出る。
今回の荷詰めのコンセプトは「職場に怪しまれない軽装」である。荷物を持って職場を出るので、キャリーバッグなんかはナシだ。といっても、あたしはもともと荷物が多くない。
17:50 Kと池袋で合流し、羽田空港へ向かう。
初めての羽田出国は、成田発のツアーより高いけれど楽ちん。
羽田の国際ターミナルは、那覇空港かってくらい小さい。2010年には新しくなってしまうので、この規模を見るのは今がチャンスである。
使用航空会社は大韓航空。8年前の同じ日に、成田からだったけど、大韓航空でソウルに行ったのを思い出す。2001年9月11日、ニューヨークの同時多発テロの日だ。米系航空会社は全便が欠航で、大韓だけが飛んだのだ。
国際ターミナルにはなーんにもないので、第二ターミナルまでバスで行って夕飯を食べる。
去年、関空からカタール航空でギリシャへ向かった際、羽田からの最終便に乗ったときは、閑散として、お店も全然やっていなかったけれど、今回はおみやげ屋さんまで全部開いていた。
去年は食べられなかった羽田版ねぎとろ丼を食べる。あたしは海鮮丼と、あら汁。
御当地限定菓子は魅惑のゾーンである。最近は特に、駅や空港に多い。くっだらねえし大しておいしくないのに、ついつい欲しくなってしまう、あれは魔力を秘めている。駄菓子的MPを持っていると思う。
そんな中、不二家の「生ミルキー」なるものを発見。7粒500円とかいってさあ、えー商売やんけ。
ま、即購入ですけど。まさかの日本土産。
ミルキーといえば。
幼き頃のフヂマリには夢があった。
そのうち、食べものに関係するのが2つ、お年玉ですいかを買って丸ごと全部ひとりで食べたい、というのと、同じくお年玉で七五三の時期に売り出されるミルキーでできた千歳飴を買って丸のまま食べたい、というのがあった。
どちらもあたしの大好物ながら、フヂマリ家では買ってもらえるわけもないものであった。すいかを丸ごとなんて食べきれるわけがないので買ってもらえるわけがない。さらにフヂマリ家はクリスチャンの家庭なので七五三はやらなかったし千歳飴も買ってもらえなかったのだ。千歳飴は宗教的な意味合いから買わないのではなく、あんな、ミルキーでできてるなんて邪道なものは我が父母の美的感覚では許されなかっただけだ。なんたって、この世でいちばんおぞましい食べもの、それはカニカマ、という父である。彼にとっては、かまぼこが食べたいならかまぼこを、蟹が食べたいなら蟹を、食べればよいわけであって、食べられないなら食べなければいいのであって、カニカマなんて貧乏くさいものは金を出して買うものではなかった。一度「千歳飴が食べたい」と言ったところ、買ってこられたのは、本物の、鶴と亀の紅白金太郎飴になっている、美しい千歳飴で、あたしの想定していたミルキーではなかったのである。印刷された紙袋ではなく、きちんと水引がついている千歳飴だったのだ。がっかりしたったらありゃしない。ちなみに雛あられも、彼が買ってくるのは、あけぼのの、清く正しい雛あられで、着色料の味のする、スーパーでプラスチックの袋に入った、色鮮やかなものは有り得なかった。
で、話がだいぶそれたが、お年玉なわけで、小遣いという制度がなく、ほしいものは商品名を伝えて買ってもらう、というシステムが採用されていたフヂマリが自由にできるお金はお年玉くらいだったので、いつかお年玉ですいかと千歳飴を買ってやろうと思っていたのだった。しかしながら悔しいかな、すいかは8月、千歳飴に至っては11月。そこまでお年玉が貯蓄されているわけがないのである。
大人になってからは、いつでも買おうと思えばどちらも買えるのだが、買えるがために、あまり興味が失せてしまい、すいかは1/6のを毎回買ったほうが邪魔じゃないし、千歳飴だったら普通にミルキー買うよ、という感じに、大人になってしまった自分がいる次第である。あたし、これが、自分が大人になったなあ、と思うときだわ。今年あたり、ミルキー千歳飴1本を咥えながら映画でも見ようかなあ。
閑話休題。
で、まあ生ミルキーを見ながらそんなことを思いつつ、手にはしっかりペコポコの紙袋が握られることとなったのでした。
インフルエンザになることを阻止するため、夏旅でも用いた免疫力を高めるビタミンBと、安売りされていた「忍者めし」というグミを薬屋で購入。
国際ターミナルはちっこいプレハブみたいだけど、一応免税店がある。
20:20 ほぼ定刻で離陸。満席。
大韓航空は、去年ソウルへ行ったときも思ったけど、イメージチェンジしつつある。少なくとも見た目という意味では成功している。
制服の基本色が淡いクリーム色と同系のエメラルドグリーンで、とっても上品。女性は頭に同色のかんざしのようなものやカチューシャをしている。かたい素材のスカーフを首に巻いて、先をピンととがらせているのも面白い。
ファーストクラスの座席も同色。エコノミーは深い茶色のシートで、これも高級感がある色なのだ。巧い。
ただし機内食はノーチョイスな1種類。飲みものは暗記できるよ、ビール、水、コーラ、オレンジジュース。
メニューはサーモンの前菜、緑の野菜が入ったごはん、牛肉の煮込みみたいなあんかけみたいな辛いやつがメイン。そしてウイダーインゼリーみたいな容器に入ったチョーヤの梅ゼリー。ゼリーがいちばんおいしかったというオチがつく。メインのあんかけは本気できちんと辛かった。そしてまずい。
スナック菓子はビールを頼まないともらえない、あたしの大好きなハニーローストピーナッツ。
ソウルまで2時間半。前日、相変わらずの遠足前日的興奮のため4時間しか寝ていないもので、それでも眠れず、こんな少ししか寝てなくて免疫力下がるよなあインフルエンザかかりたくねえなあ、と思いながら、うつらうつらしていた。
22:20 定刻でソウル・キンポ空港着。
結構揺れたので風が強いのかなあ、と思っていたら、窓の外は大雨。
先にホテルにいるSにメールを入れると「えー?さっきまで雨なんて降ってなかったよ」とのこと。夕立のようなものなんだろうか。
送迎のお姉さんは、今日が初めてのお仕事、という25歳。教育係のおばさんがついている。日本語検定1級を持っている、というが、全然そんなレベルには思えないお姉さんだった。思うように瞬時には日本語が出てこないのだろう、そのためワンテンポ常に遅れるし、説明が不十分だし、ホテルまでの1時間をうまくつなげないのだ。日本語学校の先生のように話しかけてあげれば、考え考え答えられるのだが、述語を抜いたり早口になったりすると、とたんにダメだった。そんなもんだよね、机上と現実はまったく違うのだ。努力!
あたしたち2人と、他のホテルに泊まる男性2名との4人で車に乗る。外はゲリラ豪雨のような、もんのすごい雨。前なんてほとんど見えないその中を、車はすんげえスピードでかっとばしていく。今スピンしたら終わりだな、と思って、おなかがキュンとなりながら進む。
今夜が初夜の送迎姉さんは、日本の製菓学校に留学したいのだそうだ。とてもきれいなバタークリームのケーキをつくった、その画像を携帯で見せてもらう。そして「雅」という日本人歌手のファンなんだそうで、音楽まで携帯で聴かせてもらうも、4人の日本人、誰もわからず……。なんとなく申し訳ない気分になる車内。
ホテルに着いたのは00:00過ぎ。
チェックインも教育係のおばさんがやって、お姉さんは見ているだけ。
おばさんにOとSの部屋を教えてもらって、押しかける。
このホテルが、まあ第一夜で題名出オチみたいになっています、THE都市伝説ホテルなのでしたとさ。
「ソウルナビ」というサイトで、「シティパレスホテル」のクチコミを調べてみていただきたい。相当な数、そして相当なクオリティの高さ、ある意味五つ星なクチコミが出てくるでしょう。
外観は廃墟、ホーンテッドマンション、風呂に髪の毛がつきっぱなし、しみだらけのシーツ、裸足では絶対に歩けない床、下水のにおいのするエレベーター、ダニがいる、前泊者の体液がついたベッド、などなど、あたしも最初それを読んだときは正直ビビった。でも、10件を超えたあたりから、なんだか妙に楽しくなってきてしまって、ここまで書かれるホテル、でも未だに営業していて日本のツアー会社が使ってるホテルってどんなんよ? と思えてきたのでした。同行者Oによって「ある意味都市伝説」と言われ、Kには「今回の旅行の最大の目的は、ホテルだ」と期待されるホテル、それはどんなもんかというと。
フヂマリの想定内でした。今まで5回訪れたソウルの中では最低のホテル、ボロい、中心から遠い、ホテルでしたが、いやなにおいがしないし、ダニいなかったし、大丈夫でした。
ただし、あたしより長く滞在しているOの部屋のほうが、狭くて、少し暗くて、窓が開かない感じで、それに比べるとあたしとKの部屋は、オンボロだけど、オンドル床で、広くて、窓が開いて少し明るかった。
写真で見るとそう悪くなく見えるのだが、実物はそんなことはない。ちなみにこの写真はマシなほうの部屋。
とにかくボロいのはボロい。ベッドも壁紙も窓もドアもトイレも風呂もボロい。民宿みたい。だから、もしこれが初めての海外、初めてのソウルで、女子短大生が卒業旅行かなにかで来たのだとしたら、ショックを受けるかもしれない。そういえば、ロビーあたりにいた、若い女の子たちの日本人グループは、なんとなくどんよりと疲れた顔をしていた。あれは旅疲れか、ホテルへの失望か。
00:30 着いたらごはんを食べに行こうと思っていたのだけど、4人ともそれほどおなかが減っていなかった。そこで、カジノへ行ってみよう、ということになった。
雨の中、ホテルでボロ傘を借りてタクシーをつかまえるも、行き先が通じず。ホテルへ戻り、フロントで「ウォーカーヒルカジノへ行ってください」とハングル文字で書いてもらったメモを持ち、再び挑戦。ようやく通じた。
01:30 迷路のような道路を走り、小高い丘の上にあるシェラトンに到着。隣接してカジノがある。
きれいなネオン輝く建物の中へ。
荷物チェックもパスポートチェックもされず、持ち込んではいけないと言われたカメラも「バッグの中に入れておいてください」と日本語で言われただけ。あたしたちは『ラスベガスをぶっつぶせ!』みたいに警戒されることのない素人さんなのがバレバレなのであった。
店内は真夜中だというのに賑わっていた。金曜の夜だからかもしれないけど、こんなにお客さんがいるとは思わなかった。絵に描いたような、カイジ出てきそうな、スカンピンになって身ぐるみはがれてイチゴ柄のトランクス一丁になった銀さんが歩いていそうな、カジノ的空間が広がっていた。そういやマカオもこんな感じだったよな。
掛け金は一口8円から300万円以上まで、貧乏人もお金持ちも楽しめるようになっている。一口300万円ってアンタ。そういう世界であたしが真っ先に想像するのは、バカラ賭博の隣の部屋で、さるぐつわ咬まされたマッパ美少年が2億円くらいでオークション取引される、ああそれって『お金がないっ』な方向性である。頭おかしいかなあたし。そういう絵ヅラがフラッシュバックのように脳裏をよぎるのだ。
あたしたちは、それこそ1000円ほどを握りしめ、ルーレットやスロットをいじる程度だったけど、それでも10円買った負けたで、こんなに楽しいとは思わなかった。博打ってすごい。これ、まずいなあ、朝までいられるよ、と思いながら機械の前に座っていた。
ソフトドリンクは無料だよ、とSが言うとおりで、スロットについているボタンを押すとホットパンツをはいたお姉さんが注文を取りにきて、「コーラください」と言えばすぐに持ってきてくれるのだった。すんませんねえ、1000円しか落としていかない客に呼びつけられたりして。
02:30 入口で記念撮影をし、静まり返ったシェラトンのロビーを「ここの床で寝たいなあ、シェラトンの床のほうがあたしたちの部屋より何倍もきれいだよな」と言いながら通り過ぎ、入口でタクシーに乗ってホテルへ。
O、Sと別れ、部屋に戻るも、なんとなくおなかがすく。ということで、Kと恒例の、深夜ごはんを食べに外へ出る。外は雨が降ったからか、とても涼しい。
近くに24時間開いている食べもの屋を見つけたので、そこに入ってみた。木の床に座るタイプの店。わりと広い。
メニューはハングルなのでまったく読めないのだが、中心部にあるわけじゃない、こんな食べもの屋でも日本語で書かれているものもあり、その中から2つ、「牛肉スープ」と「酔いざましスープ」を選ぶ。
客はあたしたちともう1組、すんげえ熱く語りあっている男性2人組だけで、店のお姉さんは床を磨いていた。
床を磨いているお姉さんに、壁のメニューを指さして「これとこれ」と言うと、お姉さんは「んー」と少し渋い顔をして「これとこれ?」と、指でさしなおしてきいてきた。
うむ、とうなずくと、おもむろに「日本人?」ときかれた。Kが「うん」と答えると、お姉さんはまた壁のメニューのところへ戻り、あたしが指さしたのとは別の、もうひとつ下に書かれていた「酔いざましスープ」を指さして、それと、「牛肉のスープ」にしろ、と言った。
まあ別に中身がわかっていて注文しているわけではなかったので、「はーい」と答えると、お姉さんはニコリとして厨房に入ったのだった。
緊急会議。Kと今の事項について話し合いながら、料理が出てくるのを待つ。
なぜ、いちばん上のメニューは、薦められなかったのか。売り切れ、とも思ったのだが「日本人?」ときかれたのが気になる。
おそらく日本人にはあまり馴染みがない食材が使用されているため、口に合わないのではないかとの配慮から変更を求められたのではないか、という結論に至った。こういう会議自体がもう楽しくて仕方ない。深夜ごはんの醍醐味である。
この、1こめの「酔いざましスープ」は、もしかして、去年の夜中に食べた、牛の血を固めたゼリーみたいなのが入ったスープだったのではないか、というのが、あたしたち両者の暫定見解である。あれもそういえば、拙い日本語メニューに「二日酔いに効く」と書いてあった。きっとそうだ。
あたしたちはその血ゼリーが別に嫌いではなかったのだが、確かに嫌いな人もいるだろう。だからお姉さんは、そういうゲテモノっぽいものじゃない、普通のものにしてくれようとしたのではないだろうか。
まずボトルに入った、冷えた水とコップが出てくるのは韓国の食べもの屋ならどこでも同じようなものだ。ヨーロッパでは、水は言わないと出てこない。アジアの気配りは素晴らしいなあ、といつも思う。
で、次に、青唐辛子とか、コチュジャンとか、玉ねぎのスライス、そしてペチュキムチ(白菜キムチ)とカクテキ(大根キムチ)も出てくる。これらおかずはお替わり自由。
スープは、ぶつ切りにされた牛のあばら骨?背骨?がゴロゴロ入った味噌汁と、牛スジ肉みたいな繊維質の肉が入った辛口スープだった。それぞれに白いごはんがついてくる。
韓国ではごはんをスープに入れるのが一般的である。あたしはゲロみたいなおじやみたいな食べものが大好きなので、これはありがたい食習慣である。日本の店で、出てきた味噌汁にいきなりごはんブチこんだら、ちょっと奇異な目で見られる。
グッチャグチャにかき混ぜて、アツアツを2人、黙々とすする。
もやしや何かの葉っぱ、野菜も入っている。
満腹で、コンビニに寄ってとうもろこし茶を買い、ホテルへ戻る。
04:00 フヂマリ就寝。K、ゴソゴソしている。
第二夜
07:00 おとといから4時間くらいずつしか寝ていないはずなのに、旅先だからでしょうか、目が覚める。Kが風呂入ったりしているのを意識の片隅で感じながら、うとうとし続ける。
とうもろこし茶はうまい! 韓国のコンビニならどこでもペットボトルが売っている。昔は韓国も中国と同様、甘いお茶ばっかり売っていたけど、最近は無糖のものが多くなっているのはいいことだ。中でもとうもろこし茶は、麦茶より香ばしくて、ほんのりと甘い香りがして、大好物である。韓国にはもともと茶葉による喫茶の習慣がなく、柚子の砂糖漬けやらとうもろこしなど穀物やらでお茶をつくっていたのだが、とうもろこしで充分。韓国で飲むなら、緑茶よりずっとおいしい。
09:30 ロビーで待ち合わせて、朝ごはんを食べに行く。
タクシーの運転手さんに「ここで止まってください」と、韓国語会話集そのまんまのカタカナで伝えると、非常に滑らかに伝わり、車内で4人「おおー」と歓声をあげる。
韓国語は世界の言語の中でもかなり日本語の発音に似ていると思う。だからカタカナ表記そのまんま発音すれば伝わる気がする。
中心地ミョンドン(明洞)で、シンソンソルロンタンという店のソルロンタン(牛あばら骨でとった白いダシのスープ)を食べる。
お店は日本人6割、韓国人4割、という感じでほぼ満席だった。
ソルロンタンには昨夜のスープ同様ごはんがついてきて、そいつを入れて、なおかつカクテキとかペチュキムチも入れ、足りなければ塩こしょうを振って食べる、というグチャグチャものである。具は長ねぎ、そうめん、そして薄切り肉が浮いている程度。でもうまい。さっぱりとしていて、でも旨味が強くて、毎朝食べたくなるおいしさだ。明日の朝は格安ツアーの運命で早朝出発だけど、ホテル近くの食べもの屋で絶対ソルロンタン食べようね、と約束する。
今回の旅には去年のようにスウォン(水原)に行きたいとか、ミュージカルテニスの王子様をおっかけて見るとか、そういう目的がなかった。それじゃあつまんないので「ハノクでキムチづくり体験」をすることにした。
ハノク(韓屋)とは、韓国の昔ながらの伝統家屋のこと。チャンドックン(昌徳宮)とキョンボックン(景福宮)という2つの宮殿にはさまれている、ソウル中心北部のプッチョン(北村)という地区には李氏朝鮮時代、ヤンバン(両班・貴族のこと)や女官が住む屋敷が多くあった。この屋敷がハノクである。これが今でも残っている。NHKの番組で見て以来、この地区を歩いてみたいと思っていた。
プッチョンには、このハノクを改装した宿や、チマチョゴリを着たり韓式儀礼を教えたりする文化体験をさせてくれる場所が、いくつもある。今日はそのうちの1つ、「イガ(李家)」というところに予約をいれておいた。
ミョンドンからタクシーを拾い、10分ほど。このあたり、というところで降ろしてもらったものの、似たようなハノクがたくさんあり、どれだかわからない。地図は持っているけれど住所を控えてくるのを忘れたあたしが悪い。
これかな、という家のドアチャイムを鳴らしてみたけれど誰も出てこない。仕方なく電話をかけると、大変流暢な日本語で「今、何が見えますか? 後ろを見てください。ここですよ」と誘導された。振り返ると、現代風のチマチョゴリを着た女性が手を振っていた。なーんだ、全然違う家のチャイムを押していたよ。
整えられた屋内は、母屋と、戸を全部開けられる離れのような建物、それから小さな東屋に竹林と、広くはないけれど雰囲気があった。
まずは母屋に通され、伝統茶をいただく。種類は梅・柚子・朝鮮人参・韓方・オミジャ(五味子)とあり、あたたかいものと冷たいものとが選べたりもする。
素朴な陶器でお茶が供され、餅菓子も2種類、きれいに出てきた。「もっとほしかったらおっしゃってくださいね」っていうのもいい感じ。
板床も磨かれているし、座布団やテーブルクロスは韓式のパッチワークで、派手じゃないけれど趣味がいい。室内も螺鈿や韓紙の障子など、外国人観光客が好みそうな、でも品の悪くないもので飾られている。
働いているのは女性4名。彼女達の雰囲気がいいのだ。セカセカしていないし、笑顔だし、あたしたちはキムチづくりだけのプランで申し込んでいたのだが、韓国のこと、きっとチマチョゴリ撮影プランとかも勧められるんだろうな、と思っていたのに、そんなことはまったくなく、「はいお茶飲んではいキムチつくって!」というようなせせこましさがなかった。それはまあ、同じ時刻からチマチョゴリ着て礼式習ってキムチもつくるプランの人たちと一緒にキムチづくりをするのに合わせて待っているからでもあったのだけど、それでも、お菓子をもっと勧めるとか、たとえポーズだけだったとしてもね、偉いなあ、いい気持にさせてくれるなあ、と思いながら見ていた。
ゆーったりお茶を飲みながら、チマチョゴリを着て写真を撮ったり礼式を習ったりしている他の日本人観光客を見ていた。
おばちゃん2人×2組、彼女達はチャングムを完璧に見ていた人たちらしく、ナントカ女官様みたいよアナタ、とか、キャッキャと言い合い、礼式も「あたしたちはもうこの国にお嫁に来ることはないけどね~」とか言いながら、いちばん熱心に真似していた。それから、母娘組、そしておそらく新婚夫婦+両家の母、という4人組がいた。
彼らがチマチョゴリを着て一堂に会しているのは、なかなか圧巻で、顔も白人じゃなくてアジア顔だから、結構サマになっていた。
思わず「みんな並んでいるところを写真撮ってもいいですか?」と、なぜかチマチョゴリ着てないあたしたちが言い、それぞれのカメラも預かって撮影大会をさせてもらった。
サウナでよく、チマチョゴリを着せてくれるプランがあるけれど、そういうところのチマチョゴリよりもずっと素敵な、ちょっと着てもいいかな、と思うような、生地のしっかりとしたやつだった。裾もふんわりとしている。色や種類もいっろいろあるみたいで、刺繍が入ったのやらチマ(上着)が織物のやつやら、みーんな違うのを着ていた。素敵。
離れではキムチづくりの支度が着々とすすめられていた。あたしの予想どおり塩漬けまで終わっている4つ切りの白菜でつくっていくようだった。
本で見たことのある、洗濯桶みたいなタライも出てきた。
皆様チマチョゴリを脱いで、ようやくキムチづくり。離れに移動。離れは戸が全部開け放たれ、明るくていい感じ。
2人1組で作業をする。
あたしたちを迎えに出てくれた女性の、なめらかな日本語の説明を受けながら、大根、梨、オキアミ、唐辛子などなどでヤンニョム(薬味)をまずつくり、それを白菜にすりこんでいく。彼女の家では昔、8人家族で100球のペチュ(白菜)キムチを漬けていたそうだ。ええええ大変だあ!
この手の文化体験では、自分でつくったキムチの持ち帰りが有料のところもあったりして、ええー持ち帰らなかったらそのキムチ誰が食べるのー、と思ったりもしたのだが、ここではもちろん持ち帰ることができる。真空パックに詰めてくれるのだ。
パック詰めを待っている間、我々は母屋に戻り、チヂミを二種、キムチ入りのものと海鮮だけのものとをいただき、とうもろこし茶を飲む。これもプランに入っている。他の方々はもっと高いプランなので、韓式定食、宮廷食ではなくて家庭料理のごはんを食べていた。これがまた、「客が食べきれないくらい出すのが礼儀」という韓式で、チヂミはもちろん、焼き魚、プルコギ、いろんな前菜などなど、山盛りに供されていた。どれもおいしそうだった。チャングムおばちゃんたちは、何が出てくるのかじいっと見ているあたしたちに「食べきれないから食べて食べて!」と言ってくれたが、あたしたちはチヂミ2枚で結構おなかいっぱいだった。
母屋にはちっこい家庭用台所みたいなのがあり、ここでごはんの用意をしていた。
チヂミも「もっと焼きますか?」と言われたり、何時までに出なきゃいけない、というのが決まっていなかったり、おおらかで、商売商売していなくて、とても気持ちが良い。
帰るときも、「またソウルに来て、このあたりを訪れたら、ぜひ寄ってください。お茶をお出ししますから」とか、たとえ口だけだったとしてもね、上手だなあ、いやな気分にさせないなあ、と感心しながら出てきたのでした。戸の外までお見送りに出るし。外観の写真を撮ろうとしたら撮ってくれるし。
外は快晴! 昨晩の雨が嘘のよう。気温も高くなってきた。
プッチョンは小高い丘にある。どうして世界的に、丘の上、山の手というのは高級住宅地になるのだろう、と話しながら歩く。やっぱり庶民を見下ろす感じがいいのかなあ。物理的なこともあるよな。車とか馬車とか牛車とか輿とか、そういうものを持っていないと、丘の上には住めない。徒歩で生活しなくてもいい人たちの住宅地=山の手、なんだと思う。
冬ソナに出てきたナントカ中学校?も丘の上にあった。あたしはこのドラマを見ていないので特に感慨はないのだが、それよりも、校門の近くには駄菓子も売ってるボロい文房具屋があって、ああ、これってアジアならどこでも一緒なんだなあ、文化なんだなあ、と思っていた。中国も、ベトナムも、台湾も、シンガポールでさえ、そうだった。学校指定の名札売ってたりするような、軒先にビニールの縄跳びぶらさがってるような、あの文具屋があるのだ。
1本太い通りに出ると、ちょっとおしゃれ通りだった。大使館があったり、デザイン系の事務所や画廊が立ち並んでいたりした。さすが山の手。もう一回、歩きに来てみたい。
ミョンドンに戻ると、地下鉄の駅は人がごったがえしていた。あれえ、土曜日だからかなあ、と思いつつ地上に出ると、なんとついさっきまで快晴だったのに、どしゃぶり! この混雑は雨宿りのためか。
仕方なく、駅から直結しているファッションビル・ミリオレの中で、お茶を飲みつつ雨が上がるのを待つ。ここの店員さんも、注文をとるくらいなら日本語ができる。すっげえなあソウル! 日本語通じ度は今やハワイを抜いて世界一位だろう。第二外国語人気ナンバー1が日本語なだけある。
雨は30分ほどで上がった。あっという間に再び快晴。昨日、送迎姉さんが「天気予報は最近難しいですね」と言っていたのは、このゲリラ豪雨みたいな夕立のせいなのだろう。
ドクターフィッシュ(角質を食べる魚)を体験しに行こうと思っていたのだが、Sたちが送迎姉さんにきいたところによると、ドクターフィッシュの衛生面の悪さによって感染症が広まっているというニュースがテレビで放映されて以来、韓国人には大変不人気なのだそうだ。そりゃあそうだよな。
というわけで、お買いもの大会。
生理用ナプキンのように使う「よもぎ蒸し(婦人病などに効く温熱サウナのようなもの・まんこさんに熱を当てる)」があるとOたちが言うので、それを買いに行く。たぶんホッカイロみたいなんじゃないかと予測。
韓国は本当に化粧品が充実している。IKKOさんの影響もあるけど、どんどん新しいお店ができている。でもあたしは、化粧をまったくしないからBBクリームは必要ないし、大好きだった激安シートパックも、25歳で肌質が変わってからというもの、頬が炎症を起こしてしまうので使えなくなってしまった。アルコール系の添加物が一切入っていない、オーガニックコットンのシートパックなら大丈夫なんだけど、いいにおいのするかわいいやつは全部だめで、せっかくのコスメ天国・韓国なのに、ちょっとつまらない。マニキュアくらいしか買えるものがないのだ。
15:30 ミョンドンから地下鉄を乗り継ぎ、ホテルの先の方にある、24時間やってるでっかいスーパーマーケットへ来てみた。ミョンドンからタクシーで行こうと思ったのに、運転手さんに伝えても、通じていないからか、「そのへんにそのスーパーマーケットはない」と言われてしまったのだ。あるよねー、と言い合いながら怖々、地上に出てみると、ちゃんと目の前にどーんとあった。ほらー。
スーパーマーケットでフヂマリが買うもの、それは駄菓子である。クレヨンしんちゃんの海苔だとか大好きなFRUTISというイギリスのグミとか、そんなもんばっかで終わるのである。
しかし。あたしのこの旅でのショッピング目的の1つだったリンスインシャンプー、夏にあれだけ買ったのにまだ買うのかよ、というそのリンスインシャンプーは、なかったのである!
さすが韓国美容の国。サラサラヘアを好むアジアの習性に基づいているだけある。合理性など求めず、ひたすらにシャンプーの後はコンディショナー。黒髪の美しきツヤを求めて手間を惜しまないのだ。あたしとは大違いだな。
というわけで、1本たりともリンスインシャンプーを見かけることはなかった。残念! 液体は機内持ち込みできないから段ボール箱でも持ってきて、帰りに山ほど詰めて帰ろうかと思っていたのだけど、実行しなくてよかった。
スーパーマーケットの袋を4人とも抱え、タクシーでホテルに戻る。昼に改めて見上げるホテルの外観はマジでホーンテッドマンション。ボッロいの。
18:30 夕飯を食べに外へ出る。
惨憺たるホテル口コミが山のようにインターネットでひっかかってくるような状態の中、そんなホテル評とは真逆の、たいそうおいしいと評判の焼肉屋が近所にあるらしいことを発見したのだ。そこが今夜の夕食会場である。
ホテルからほんの1分ほどの場所は、すぐに見つかった。日本語のメニューもあるけど、日本人客は我々の他にもう一組、かわいい女の子4人組だけで、あとは地元客だった。席はほぼ埋まっていた。我々の後からも、どんどん客が入ってくる。
牛肉の焼肉は、焼肉の本場韓国でも大層なごちそうで、日本人が牛肉焼肉を食べる頻度よりずっと少ない、と、去年のガイド姉さんが言っていたとおり、普段は豚肉がメインである。あたしは牛肉のにおいがあまり得意ではないので、どちらかといえば豚肉のほうが好きだ。
この店でも、一応牛肉もおいてあるけれど、みんなが食べているのは「サムギョプサル」と呼ばれる豚の三枚肉。あたしたちも、これを注文。値段は牛カルビの1/4くらい。
庶民店なので店員さんは焼いてくれないし切ってくれない。でっかい肉片をジュージューやりながらキッチンバサミで切っていく。隣の席にいた、つっかけサンダル&ジャージ、という兄さんは異常に良い姿勢でハサミを握り、簡単そうにバチバチ切っていくのだが、あたしたちはスジにひっかかったり肉がくいこんじゃったりして、なかなか思うようにならなかった。うーん、何にでも熟練というのはあるものだ。師匠と呼ばせていただきたい。
韓国焼肉のいいところは、とにかく葉っぱを好きなだけくれるところだ。サンチュはみずみずしくてでっかいし、日本ではなかなか出てこないエゴマの葉もある。日本の焼肉屋のサンチュはちょっとしか出てこないしわりと高いので「ああまだ肉はこれだけあるのに葉っぱがない」とか計算しながら食べなきゃいけないのが腹立つ。あたしはサンチュよりエゴマの葉が好き。モソモソするけど香りがとても良いのだ。
この焼肉屋の評価を見て、「ホテルがあまりにひどいから相対的に評価が上がっちゃってるだけで、本当は大したことないんじゃねえの」と疑っていたのだが、確かにおいしかった。なにしろ安いし。お客さんがいっぱいいるし。
タクシーをつかまえて、挨拶がてら明け方5時までやっているファッション地区・トンデムン(東大門)に行ってみる。
あたしの目的は靴を買うこと……だったのだが、物との出会いっつうのは運命だわね、今回はめぐりあえず。
土曜日ということもあり、若い兄ちゃん姉ちゃんがわんさかいた。
22:30 コンビニ寄ってカップラーメンだとかとうもろこし茶だとか、あたしの大好きな「イヴ」という、ロッテの、昔、日本でも売っていた、香水味のガムを大量買いしたりしながらホテルに戻ってきた。
あたしの買ったカップラーメンは、ナポリタンスパゲティ、らしいのだが、うーん、40点。もう少しトマト味効かせて、しかも味を濃くしないとだめ。日本のカップラーメン業界なら企画段階で落ちる商品。改めて、日本のカップラーメン技術の高さを感じる。世界でいちばん日本のカップラーメンがおいしいってのは、100人にきいたら100人とも「そのとおりだ」と言うと思う。
布団にもぐりこんで、ヲタクたちがチーム対抗でゲームをするのを実況するっつうロクでもない番組を見つつcassという韓国大手のビールを呑むKは、その薄ら笑いの表情といい、まさしくカスっぽい感じが素敵だった。
23:30 風呂入って就寝。
第三夜は来ないのだ
05:15 起床。荷物詰めて、ホテルの前の通りの、24時間やってる定食屋みたいな食べもの屋でソルロンタンを食べる。ソルロンタン、本当にうめえ。
この店はおばちゃん3人くらいで切り盛りしていて、目玉商品はどうやら入口近くで量産しているキンパブ(海苔巻き)のようだった。朝5時だっつうのにガンガン海苔巻きの山を積み上げていて、おいおい平日なら通勤の人が買うかもしんないけど今日は日曜だぜ、と思いながら見ていると、意外なことにどんどん売れていくのだった。どんだけうまいんだ、そのキンパブ。ちょっと買ってみればよかった。
韓国の、こういう、1日中やってるちっこい食べもの屋でごはん食べるのは、おいしいし面白いから大好き。
帰国日は今まで、空港で高いくせにまずい朝ごはんを食べることが多かったので、今回、ホテルのそばにこういう店があって、ソルロンタンがあって、本当に幸せだった。
06:10 行きのときと同じ送迎姉さんがホテルのロビーに迎えに来ていた。外から帰ってきたあたしたちを見て、少し訝しげだったので「朝ごはん食べてきたんですよ」というと、うなずいていた。
このお姉さん、2日前が初仕事だったあのお姉さん、今日も、今度はおじさんのガイドさんが教育係として同行していた。
お姉さんは2日前からまったく進歩せず、自分からは何か発言しようとしないし、説明もおじさんに促されてようやくするような感じだし、「こちらへどうぞ」とか「荷物を載せてください」とかも言えない。それが若干気になり始めていた。言われないと何もできず、言ったことも言ったことの範囲でしかできない、応用がきかないタイプ。あたしが一緒に仕事したくないタイプ。それは仕事が初心者だからではなく、日頃からこの人こういう感じなんじゃないかなあ、と思われる人柄なのだった。
例えば、車から降りるときに、ドアは開けられない、後ろに座ってる客が降りやすいように自分が座っていた座席を前に倒したりしてあげられない、おじさんに言われてようやくできるんだけど、たぶん、この人、憶測だけど、今度左から降りるようなことがあったとき、応用できないと思う。そういうタイプ。
かわいいんだけど、一応学校出て、結婚までしてるんだからなあ、と思ってしまった。18歳なら許されるが25歳では許されない。
途中、もちろん物産店に立ち寄り、キムチの試食ととうもろこし茶試飲。しかしながら、なぜ、こんなに物産店で食べさせられるキムチはおいしくないんだろう。不思議でしょうがない。確かに初めてソウル来たときはボッサム(王様)キムチとかいって買いましたけど、何回か来てみて、普通の食べもの屋で無尽蔵に出されるキムチ食べてると、よっぽどそっちのほうが味が奥深くておいしいってことがわかってしまうのだ。日本人は浅く漬かっているキムチを好むのだが、それ用になっているからかなあ。味が染みていなくて、乳酸発酵していなくて、おいしくない。
ひととおりキムチやらチャンジャ〈塩辛〉やらを食べさせられ、「ハイでは店内もどうぞご覧ください」と言われた瞬間に席を立ち、店の外へ出る4名。すばやい! だって市内の何倍もの値段で海苔やらひまわりの種チョコレートやらが売っているんですもの。
店から出ると目の前に車。運転手のお兄ちゃんはあたしたちに気づいて、すぐに乗せてくれたものの、添乗員2名はまだおらず。添乗員より早く戻ってくる客ってどうよ。
5分後くらいに添乗員2名登場。少し照れ笑いする日本人4名。ここからキンポ(金浦)空港まで10分くらい。
07:30 空港着。チェックイン。出国審査へ入らず、添乗員さんたちが帰っていくのをあたしたちが見送ってから、セブンイレブンのぞいてみたり、ロッテリアで、昨日テレビのCMでやっていたという「プルコギライスバーガー」を買ってみたりする。
キンポはインチョン(仁川)空港に比べてずっと小さいので免税店もたいしたことがない。羽田空港の国際ターミナルと同じ。
プルコギライスバーガーは、普通のプルコギバーガーのほうがおいしかった。ごはんが冷凍のミックスベジタブル味。冷凍庫の味。
09:40 離陸。快晴。
機内食はもちろん一種類。エビのあんかけみたいなのとごはんと、そして個包装のパック入りひややっこ。
豆腐!? 斬新じゃねえのやるじゃねえの。行きのチョーヤ梅ゼリーといい面白いことやってんなあ。ちなみに味は醤油ではなく和風ドレッシング的なものだった。機内食全体としてはまったくもっておいしくないけど、独自路線開拓しようっていうその心意気はいいと思う。
西域から東域への飛行機は往々にして追い風により速い。今回も1時間半ほどで羽田に帰還。
後日の話、漬けたキムチの味はというと。
おいしかった。物産店で無理矢理食べさせられるキムチの何倍もおいしかった。塩のカドが少し立っていて、しょっぱく感じたのは改善点だけど、ちゃんと乳酸菌発酵していて、ピリピリしていて、好ましい味だった。もっとたくさんほしくなる。日本でもつくれるだろうか。挑戦してみようか。
17. september 2009
厭世家と岬⑪
8月10日から11日
雨。昨日と同じ。空は明るいので、きっと昼には晴れるだろう。
07:30 朝食。豪華ごはん。
08:00 通学途中のTさんがまた会いに来てくれた。このホテルは朝食の管理が甘いので、ひょろりと入ってきて宿泊客じゃなくてもごはんが食べられてしまう。日本人ならなおさら。Tさんは「朝食はこっちですか?」ときいたら、「はいどうぞ」と言われたらしい。どうぞって言われたんだから、いいんだよ、と言いながら、一緒に食事。
09:00 昨日、荷物をつめてみて、あとどのくらい買いものをしてもいいのか把握しといた。すきまを埋める分、スーパーに最後の買い出し。
Sさんからご依頼の、インスタントカップ入りマッシュドポテト。お湯を入れてかき混ぜて、5分でできあがり。
これ、持って帰るのすんげーかさばるけど、確かにおいしい。
フヂマリが好きなおみやげ第2位は「ホテルの石鹸」ですよろしくみなさん。
これが泊まっていたグランドホテル。ノーベル平和賞受賞者はここの正面バルコニーで受賞スピーチをします。
そしてこれが、ホテルより小さいノルウェーの国会議事堂です。まるっこくてかわいいです。目の前に空港行きのバス停があります。
10:01の空港行きバスに乗る。さよならオスロ。また来ます。
免税店でこんなにおみやげ買ったことない、ってくらい、チョコレートやサーモンを買い漁る。
あたしの大好きなデンマークはアントンバーグのミニチュアリキュールチョコレートを嬉々としてレジにのせる。
12:05 アムステルダム行きのKLM、離陸。時間どおり。
アムステルダムからオスロまでの1時間半の間に、KLMは、飲みもの→軽食と飲みもの→食後の飲みもの→お菓子、と、4回もサーブをする。プラス免税品販売で5回。偉い。
軽食のサンドイッチも、手描きの、やわらかいタッチのデルフト焼き風絵柄のパッケージ。三角形が2つ並んだ、ちゃんと自立するデザインのプラスチック容器。底辺が細すぎるようにみえるけど安定性の高いプラスチックコップ、KLMカラーの水色に、オランダの国旗色であるオレンジの水玉を散らした紙コップ。
赤いチェックの紙ナプキンに鮮やかなシュガーアンドミルク、ごく細い、美しいティースプーンまで、すべて、なんでもないことなのだが、洗練されている。感心して眺める。
サービスも非常に良い。笑顔、きちんとした言葉遣い、ヨーロッパ内線の、1時間半のフライトなのに手を抜かない。
飲みものの注文を取るのも、たとえば「コーヒーを」と頼むと、「はいわかりました」と返事をし、かつ、コーヒーを渡しながら「他にはよろしいですか?」ときく、これにはびっくりした。水を、と言えば「スパークリングとガスなしとどちらがいいですか?」と、単語ではなくて文章で尋ねる、リキュールも勧める、とかさ。感じがまったく悪くない。ちゃんと客の目を見る。
お菓子は、大好きなストループワッフル(間にキャラメルシロップがはさまっているクッキー)。KLM、ますます好きになっちゃう。
Tさんにもらった、このチョコレート、フヂマリのノルウェー一押しチョコレートです。
ビターチョコレートの間に、マジパンとイチゴゼリーがはさまっています。
13:45 定刻で着陸。
ここでもまたおみやげを買いまくる。ストループワッフル、巨大チュッパチャップス、ショコラーデヘーゲル(トーストの上にかける、チョコレートふりかけ)。なんだ、全部食べものじゃないか。
シェンゲン条約国外に出るためのパスポートチェックに並ぶ
うしろにいた日本人の、おばあちゃん・おじいちゃん・息子・母、という家族の、母と思われる女のしゃべりかたがなんともイヤなやつで、顔が見たくてウズウズする。なんというか、身内に対してもつっけんどんっつうか、ムダに鋭いしゃべりかたっつうか、正論で諭すと逆ギレしそうっつうか、関わりたくない保護者タイプっつうか。
「顔が見たい」ってしゃべりかたする人、たまにいるんですが、後でマジマジと顔を見たら、予想どおり、あたしのきらいなイヤなやつの顔をしていた。うっわー予想どおり。こういう親いるよなー、学校に対する無駄な不信感出しそう、連絡帳の書きかた知らなそうとか、なんでこうなのかな、っていう、攻撃的な感じのやつ。あー、あたしも気をつけよう。やわらかくしゃべるように心がけよう。
15:20 ほぼ定刻で離陸。帰りもボロい機体。そしてあたしの好きなA側の席を取ることができなかった。
後ろの席の日本人女3人の、特に窓側の女が、とにかくうるせえ! しゃべる声がでかくて、しかも無駄に躁状態というか、自己啓発セミナー的というか、明るくて楽天的なのあたし、みたいな、「ああ素晴らしいですね、そういう考えかたをされるっていうのは、心がおやさしいからなのね」みたいな相づちのうちかたが、シラフでできるやつ。誰に何に対しても理解あるの、みたいなしゃべりかたで、ひえー新興宗教っぽいなーと思ってたら、思ったとおり、エホバの信者集団だった。
あの人たち面白いのね。二人称も三人称も「姉妹」「兄弟」なのね。「姉妹はなにを買ったんですか?」「ローマの姉妹たちにも・・・」とかね。世界大会とかあるらしいぜ。今年はローマだったらしいぜ。エホバって、もっと、禁忌がいっぱいあって、質朴なんだと思ってたんだけど、酒のんで酔っ払ってさらに声がでかくなるわ、延々と買いものの話をし続けるわ、結構ハデだった。
「わー、そういう考えかたができるのって、素晴らしいなあ、と思います」とか「姉妹が楽しかったなら、私もとってもうれしいです」みたいなのが、なんていうんだろうなあ、嘘臭いんだよな。そう自分に言い聞かせてるんじゃないかしら、って思えるような、白々しい明るさなわけですよ。それが本当に気持ち悪い。一緒に会話してるわけじゃないのに吐き気を催させるなんて、なんつー攻撃力持ってるんだよ。
これも顔見てやろう、と思ってトイレに行くときまじまじと見たら、あー、うん、宗教とかハマりそうっつうか、うん、ね、みたいな、30過ぎの美人じゃない女だった。こわいこわい。宗教団体のネームプレートを堂々と、身内の会場以外でも、機内でも、どーんとつけていられる、その美的センスのなさこそ宗教マジックだわ、と思った。
ワインはエコノミークラスでも、チリか南アフリカの2種類から選べる。さっきチリを呑んだので今回はアフリカにしてみましたが、今いちおいしくありませんでした。
食事は、チキン=日本食とベジタブル=パスタ。
日本食は、ゆかりごはん、チキン・ウナギ・塩もみきゅうりの前菜、筑前煮、果物の寒天寄せ。パスタは、ほうれん草とチーズのパスタ、トマト味のライスサラダ、バニラチョコムース。
隣の白人兄さんとオランダ人のパーサー姉さんが「ちく……ぜん……これってチキンなのかなあ」「さあ、私もチキンは日本食、ってきいただけだから中身はなんとも……」と話をしてたので、「筑前煮は確かにチキンといえばチキンですよ。野菜とチキンのソテーみたいな感じですよ」と口をはさむ。
どれもまずくはない。機内食の日本食というのはいっつも日本食ではない味つけなので、少し苦手。あたしはいつもだいたい、洋食を選ぶ。
パーサーは、やっぱり親切。
行きは食べられなかった間食も食べる。
A席でなくても、夜明けは美しい。
朝食は、ヨーグルトムース、フルーツサラダ、シナモンアップルパイ、オムレツ入りフォカッチャ。
できればヨーグルトムースじゃなくてしょっぱいものだと嬉しかったが、どれもおいしい。
パッケージの色使いやフォントまで素敵。
11日09:30 成田着。
フヂマリは、職質にこそ遭ったことがないのだが、検札とか、手荷物検査とかに引っかかりやすい。見ためが怪しいのかなあ。
短い滞在しかしない都市でも、だいたい検札に遭う。空港でも税関でよく荷物を開けさせられる。今まで旅先で一度も会わなかったことがないと思う。今回も、リスボンでも、ポルトでも、5時間も滞在していないパリですら! 「はい切符見せてください」というのに出会った。
荷物検査はムカっとくるので、あたしはいっさい手伝わず、ブラジャーが出てこようがパンツが出てこようが「あーそれパンツですね」と答えるだけで、係官にちゃんとチャックが閉まるまでしまわせる。だってシャクなんだもん。
今回も、成田でニアミスだった。今回は開けられるとまずいものが、植物系とか食肉系とか、いくつかあったので、アチャー、と思っていたのだが、係官の兄さんは手荷物の、大量のクッキーと、巨大チュッパチャップスにごまかされ、役人根性を突き破ってちゃんと「あー本当に巨大ですね」と、チュッパチャップスにコメントをくれて、それでごまかされてくれた。危なかった。
行きとまったく同じねぎとろ丼を食べてから帰宅。
ポルトガル、今まで行った国の中で、かなり上位だ。旅の興奮のまま答えるなら、ノルウェーの次に好きかもしれない。
田舎具合、食べもの、酒、物価、言葉、歴史、建物、どれもが好きだった。ベルサイユ宮殿とかペトラ遺跡とか、とびきりすんげえ見どころがあるわけじゃないけど、街の雰囲気が、あたしの好みだった。
もう一度、いつか冬に、ゆっくりと、絶対行くぞ。
絶対行くぞ。
12. september 2009
厭世家と岬⑩
8月9日
雨!
08:00 起床。
豪華朝食を食べずに、TさんとOさんと待ち合わせているおしゃれカフェ・通称丸見えカフェに、朝ごはんを食べにいく。6年ぶりに全員がオスロに集合するのだ。
大雨の中、ビチョビチョになりながら約束のカフェへ。
昨日下見に来たときは、こんなに晴れていたのに。
ガラス張りの、素敵なパン屋併設カフェで、地下鉄の駅から少し離れた、閑静な住宅街にあるのだが、それが今日はアダになった。着くまでにびしょびしょだわこれ。
チャイラテと、シナモンロール、チーズサンド、パストラミサンドを食べる。
パンもチャイも、ぜーんぶおいしい! オシャレ度に惑わされることなく、きちんとつくってる。はさまっている野菜もきれい。
Oさんは今日ノルウェーについて、またすぐに今日の午後、オーレスンという町へ飛行機で行ってしまうので、11:30ごろ解散し、あたしはビグドイという高級住宅地を歩くため、船に乗る。
野外民俗博物館やバイキング船博物館など、オスロの観光の目玉はここにしかないので、そして今日は日曜日、街中のお店はぜーんぶ閉まっているので、たっくさんの観光客やツアーバスが集まっていた。
地区自体は、閑静な高級住宅地。
野外民俗博物館では、昔の服を着ている人や、民族舞踊を見ることができる。
これがバイキング船博物館。屋内に、ドーンと、2隻のバイキング船が納まっている、男らしくて美しい、静かな博物館。しかしこの日は入場制限まで!
こんなに混んでるの、初めて見た。
バスで戻ってきて、中央駅のキオスクでプルセ(ソーセージ)を食べる。ルンペというじゃがいもでできたクレープにくるんで食べる。これもノルウェー料理だ。他の国で見たことがない。
今では若い人たちは、マクドナルドや、昨日あたしも利用したようなコンビニの食べものを好むようになり、昔ながらの「ノルウェー風ホットドッグ」は食べなくなってきているのだけど、あたしはこれがだーいすき!
日曜はどの店もやっていない。やってるのは駅にある小さなスーパーとレストランくらいだ。正しい安息日のありかた。
ホテルに戻って昼寝でもしようと地下鉄に乗ったら、オスロのサッカーチーム・ボルレンガのユニフォームを着た人がたっくさん! こ、これはもしや試合があるのか。ついていってみる。
予想通りのスタジアムだった。せっかくなので、Yのためにホンモノの!ユニフォームと、マフラー買う。
オスロのチームは強くないのだが、日本人の男性2人が試合を見に来ていた。なんという名前のチームかも知らないで見に来たらしい。でもちゃんとオスロのマフラー買って、スタジアムに入っていった。あたしと同じように、ユニフォーム着てる人たちについてきてみたんだろうか。有名チームじゃぜんぜんないけど、旅先で地元民にまじって見るサッカーは、きっと面白いよな。サッカー好きにはつい好意をよせてしまう。
試合をテレビで見ようとホテルに戻ったのに、どのチャンネルでも放映せず。ちぇっ。
暇なので、荷物が持って帰れるかどうか、試しに詰めてみた。すると外から大歓声。なんだ? と思い、ベランダから下を見ると、ホテルの隣のスポーツパブに、溢れんばかりの人。サッカーだ!
何度も歓声がきこえ、最後に拍手がおきたところをきくに、どうやら勝ったらしい。
19:30 夕飯を食べに、港のレストランへ。アーケルブリッゲというこの地区は、海沿いにおしゃレストランが並ぶ。テラス席もたくさんある。
有名なシーフードレストランのテラス席に座り、ビールとムール貝のワイン蒸し、茹で海老を注文。
注文を取りにきた店員、あたしに対しては別にそうでもなかった、ただのクール兄さんなんだと思ってたら、英語を拙く話す外国人客に、なんか冷たい。態度が悪い。言葉が通じないと、「そこで待ってろっつっただろ」みたいな態度をとる。やーな感じ!
こんなところにある店、観光客たっくさん来るだろうに、そんな態度とってたらだめでしょうが。
観光客がムール貝の英語「mussel」を読めないで、「ムール」と注文すると、「それ、マッスルって英語でいうんですけど(読めないんですかプッ)」みたいに訂正しやがるし! きみ、相手、客だからね!
かと思うと、だんだんご機嫌がなおったのか、優しくなる兄さん。謎だ……。寝起きか?鬱病か?
そーんな様子を見ながら、黙々とムール、海老を食べる。海老が子持ちのおかげで、手が卵だらけ。すると兄さんが、お手拭きやナプキンをたくさんくれ、「あなただけじゃなくて、みんなそうなるから、あっちのご婦人もおんなじだから」と慰めてくれた。いい奴……なのか? フリーダムでいいなあ、その客商売。
夕方というのは、南欧では、とてもじゃないけど外を歩く気候ではない。夕日のうだるような暑さで、ホテルで寝て、日がほとんど暮れて暗くなってから出かける、というくらいなのだが、ノルウェーの場合はそれが違う。日がまだ暮れてなくても、うだるような暑さ、というのはまったくなくて、穏やかな夕方になる。
小ぶりのムールとエビだったけど、うまみがしっかりあって、おいしかった。
ふと、この天気ならきれいかも、と思い、エーケバルグという丘にトラムでのぼる。
素敵な高級レストランがテラスを出しているのを知っていたので、そこでワインでも呑もうかと思ってたのだけど、日曜日は早くに閉店だそうで、かなわず。
オスロの景色だけ堪能して戻ってくる。
22:30 就寝。
あーあ、もう帰らなくてはならない。
10. september 2009
厭世家と岬⑨
8月8日
あたしにとってノルウェーのにおいとは、ガーデモエン空港の税関を出てきてすぐの、キオスクで売っているプルセ(ソーセージ)の焼けるにおいである。こいつに同じくキオスクで売っているコーヒーと新聞とにおいがまじったやつをかぐと、涙が出てくる。条件反射である。
8:30 起床。
旅の間、あたしは眠りが浅く、短くなる。興奮状態にあるからだろうか。ずうっと遠足の前日状態なんだろうか。
グランドホテルでの朝食は、歴史のある「グランドカフェ」で食べられる。っていってもノルウェーの歴史なんて大したことないんだが、まあ、一応、イプセンが贔屓の客だったカフェです。
なんでもある。ノルウェーの食べものは、ここにあるもので全部かもしれない。
パンは10種類、クネッケブロー(クラッカーのようなパン)も、シリアルもたくさん。チーズ、ハムは各5種類以上、他にフルーツ、卵料理、肉料理、フィスケカーケ、ポテトも、イングリッシュブレックファストのようなビーンズも、ミルクが3種類、ジュースが4種類、コーヒー紅茶は10種類以上。サラダに生野菜にピクルス、カヴィアール(たらこペースト)にマリネのニシン、そしてもちろん山盛りのスモークサーモン。
好きな食べものがありすぎて、主食を食べる余裕がない。とりあえず、ニシンと、カヴィアールと、ヤイテオスト(茶色くてあましょっぱいやぎのチーズ)、少し甘いピクルスをガッツリ食べる。TINE(ノルウェーの乳製品大手)のオレンジジュースと牛乳も飲む。トワイニングのアールグレイにノルウェー産蜂蜜をたらして飲む。
うわあああんノルウェー!
10:30 ゆっくりと外出。港のほうへ歩いてみる。
2年ぶりのオスロは、変わったものと変わってないものがある。確認しながら歩く。
南欧ポルトガルで一度も飲まなかったのに、スラッシュ(グラニート=かき氷)を飲む。まさかオスロで飲むことになろうとは。そのくらい暑い。朝は小雨がぱらついていたのが、もうすっかり上がって快晴になった。
トリック(トラム)で(ノルウェーなりの)お買い物地区・マヨルストゥアへ。
「農民市場」がひらかれていた。
チーズや蜂蜜、ジャムなど、有機の手づくりのものが売られる市場。
もんのすごく大きなさくらんぼを売っていたので、1カップ購入。
甘くておいしい!
大学へも行ってみる。
まだ誰もいない。始まりの雰囲気が全然ない。
中央駅まで戻ってきて、ペペスピザで昼食。
ふっくらしたパンピザにルンメドレッシングという、サワークリームと生クリームの中間みたいなニンニク風味のクリームをたっぷりつけて食べるのがノルウェー風。これは、他の国では見たことがないので、ノルウェー料理といってさしつかえないと思われる。
Tさんから電話があり、街に出てくるというので会うことになる。Tさんに呼び出されたDさんも来る。
21:00 昨日と同じコンビニで焼きそばや春巻を買い、冷やしておいた免税店ビールを持ち、洗濯物入れ袋を裂いてつくったビニールシートとホテルのグラスを抱えて、前に住んでいたソグンスバンという湖へ。
雲が少し多かったのだが、明日が雨だったらやだなあ、と思い、今夜、「湖畔で夕飯」を決行する。
学校が始まる前の土曜日だし、(ノルウェーなりに)混んでたりうるさかったりしたらいやだな、と思っていたのだが、そんなことはなかった。相変わらず美しい。何の音もしない。
ベンチで夕飯を広げる。
日没後の紺空を満喫し、さっむいのに泳いでいるバカを愛でる。やっぱりいいところだ。
00:00 ホテルに帰宅。寝ようと思ったのにリトルダンサーやっててつい見ちゃう。
これはやっぱり、監督が本当に良いんだなあ。
亡き母との思い出、一人親として気負う父、いろんな、人生の苦い部分がちりばめられていて、単なる天才少年が貧乏に打ち勝ちロイヤルバレエスクールに入りましたやったー受かったぜみんな大喜び、という話ではないってのがいい。
合格をきいた田舎教師も、父も兄も、喜びではなく別離や今後への不安をあわせ持った苦い顔をしているのが素晴らしい。
見始めて3分で号泣。反射神経で泣く。
いちばん泣けるシーン、という言いかたが大嫌いなのだが、仕方ない、そう言うしかないのだが、そいつは、「いちばん大切なものをもってこい」と言われた少年が、母からの手紙を持ってきて、しかも遠い目で、感情を表さずに、そらんじてみせるところと、最後に兄ちゃんが「おまえがいなくてさみしいよ」と、バスの中にいて、もうきこえていない少年に言うシーン。今こうやって文章にしてるだけで涙が出てきた。
01:30 就寝。







