2011.12.台湾

1日目。

いちばん安いホテルと飛行機のフリープランツアーで3泊4日。

12:45 初の新型車両スカイライナーだ!
快晴の関東。

シャンプーを買おうとして、店の人に止められた。液体物を手荷物にはできないのだった。毎回これを忘れる。

初めての航空会社・キャセイパシフィックに乗り込む。
15:34 離陸。
直後にかなり揺れた。東京湾上空で旋回しただけなのに、怖いかも? と思うくらい降下した。
救いは、前席の子どもたちがキャッキャと歓声をあげていたことだった。
雲からすぽん、と抜けたら、揺れもぴたりと止まったが、シートベルトの着用サインは消えなかった。
パーソナルTVを大好きなフライトインフォメーションの地図画面に合わせると、なんと時速300kmという強烈な向かい風だった。飛行機のスピードは普段だいたい時速800から900kmくらいなのに、今日は500kmしか出ない。かなりの強風が上空に吹いているようだ。

18:45 予定よりも遅れて台北着。
着陸も大変揺れた。なかなか高度が下げられなかったのだ。

パッケージツアーなので、ホテルへの送迎はついている……はずなのだが、あたりをいくら探しても、代理店の人がいない。
親切な他社のお姉さんが「どうかしましたか?」と声をかけてくれ、あたりを見てくれたのだが見つからず。
わたしと同じ送迎を待っているのだろう日本人観光客が10名ほどいたが、誰もわからないようだった。
タクシーでホテルまで行ったらチェックインできるのかな、と考えつつも、とりあえず空港のサービスカウンターで代理店の名前を伝え、港内に呼び出しのアナウンスを入れてもらうと、おじさんが現れた。
彼は最初に「ああ、あなたは僕のお客さんじゃないよ」と言った人だった。

「僕じゃないと思うんだけれど」
と言うので、
「名簿だけでも教えてもらえませんか?」
とお願いし、名前を確認する。待っていた他の客も集まってきて見てみると、そこには我々の名前が。
どうやら代理店がおじさんに送迎のツアー名を間違えて教えていたようだった。

19:30 やっと送迎バスに乗り込む。
自分のミスではないと言っていたので、謝らないかと予想していたが、おじさんガイドはきちんと謝罪をした。
「いやあ、本当に申し訳なかったです。心配だったでしょう」
おじさんガイドは、違うツアー会社のパネルを持たされ、それを掲げていたのだ。

両替をすると、1元=2.5円だった。初めて台湾へ来たときは1元=4円、5年前は3円だったから、どんどん安くなっている。

混載車に詰め込まれ、いろいろなホテルへ行くためにグルグルまわるのが、結構好きだ。違うホテルや地区を見られるのは面白い。無料の市内バスツアーみたいだ。

21:00 わたしのホテルに着く。
賑わしい中級ホテル。古いが台北駅のすぐ隣と場所はいい。従業員も活気のある顔をしていて感じがいい。部屋も、とてもよく掃除されている。レセプションのお姉さんは片言の日本語を話す。

とにかくごはん!
台北駅のフードコートはもう終わってしまう時間だった。日曜日ということで、三越も早くに閉まってしまい、あたりをうろついてみても、予備校と予備校生相手の弁当屋くらいしかない。そう、台北駅の周辺は一大予備校街なのだ。
地元の人に、
「なんでこんなに予備校がここにあるの?」
ときいてみたが、
「なんでって……駅だからだろ。つまりどこからでもここなら来やすい、ってことだろ」
昔ここに孔子廟(日本でいう大宰府天満宮的な学問の神様)があったとか、そういうわけではないらしい。
それにしてもビールが呑みたいビールが呑みたい!
これは……和民のチャンス!?

台北駅の向かい側のビルには和民が入っている。それは5年前から知っていた。しかしわざわざ外食のうまい台湾へ来て、和民に入る理由がなかった。だがしかし今夜は……!!

内装はバリバリ中華、真っ赤で、それはそれで素敵。メニューはほぼ日本と同じ。値段も同じくらいだった。
客入りはまずまずといったところか。とにかく広い店内。

「イラッシャイマセー」
「アリガトーゴザイマース」
ところどころに日本語が使われている。
ひざまずいて注文を取るのも、日本の変なマニュアルをそっくりそのまま持ってきているようで、変な気分がする。面白い。
ビール呑んで、たこわさとだし巻き卵を食べて出てくる。

ビールが呑みたかっただけなので、今度は予備校生相手のような店で米を喰らおう。
開いていた客家料理の店で「客家鴨肉飯」を頼む。

大椀に飯が盛られ、その上から煮卵、生揚げの煮物、たけのこ、キャベツ、甘辛ダレの鴨脚焼き、肉団子……どれも違う味つけがされたものが乗せられている。豪華! そしてうまかった。
日本人的には、もう少しごはんがあつあつで柔いといいのだが、まあそんなことは大したことではない。

途中見かけたセブンイレブンの広告。
おでんは「関東煮」と呼ばれ、どのコンビニでも売られていた。
おでんに限らず、日本食がたくさんたくさんある。15年前に来たときは、そんなことなかったのに、ここ最近のブームなのだろうか。

夜、駅構内にたむろする高校生、というのも東京とまったく同じで面白い。
くっちゃべっていたり、ダンスしてみたり、宿題の話をしてみたり、ウダウダと楽しそうだ。
送迎のガイドおじさんとバスの中で話していた、
「近頃の若者は!」
というのを思い出す。
ここ台湾でも、引きこもりや親のスネをかじり続けるニートな若者は嘆かれているようで、ガイドおじさんはしきりに
「都会の若者は特に軟弱だ! 職に就いてもちょっと怒られたくらいですぐ辞めちまう」
と不満そうだった。
どこの国でも発展と近代的教育の先にあるのは新たな問題なんだなあ、と感動する。

愛玉子(「オーギョーチ」=レモンシロップ味のゼリー)ジュースを買いたかったのに、店はもう閉まっていた。
台湾の食文化は大陸に勝るとも劣らぬ!
こんなに小さな国土なのに独自色が強い。いろいろある。そしてうまい。

日本の家より湯量の豊富な風呂に入って0時に就寝。




2日目。
台湾の冬は雨が多い。気温は15度くらい。ジャケットを着ると暑いが、脱ぐと寒い。日本の
4月初旬のにおいがする。
ホテルの人は、
「今週はこの冬いちばんの寒さですよ。10度を下回るなんて!」
と言っていた。

8:00 朝食。

期待はまったくしていなかったが、想像よりはがんばっていた。
和洋中あり、どれもおいしくも、おいしそうですらなかったが、心意気は偉い。
おいしくないとわかっていても、1度は宿の朝食を食べてみたい。

真面目に仕事をする人が多いホテルだった。
例えば朝食会場の、担々麺をつくる係のおばさん。卵を焼くのも彼女の仕事で、大忙しだったが、列ができても焦らず、顔色も変えず、淡々とこなしていく。こういう人は安心できるのだ。笑顔が多少なくても、信頼できる。
担々麺は小麦麺と米粉を選べて、どんなに行列になっていても、丁寧に一人ずつ訊ね、相手をしていた。日本なら当たり前のことかもしれないが、外国へ行くとこれはかなり当たり前ではない。

米粉麺とお粥、ヤクルトにグアバジュースが朝食。明日からは外で食べよう。

日本人だけでなく、いろいろな国の観光客がこのホテルには泊まっていて、そこがいいところでもある。
香港、中国富裕層、他に韓国、フランスなどもいた。Wikipediaさんによると、香港だけでなく中国都市部からの個人観光客もここ数年で許可されるようになったらしい。
ガイドおじさんに昨晩、
「台湾人が大陸中国へは行けるの?」
ときいてみたら、
「それは昔っから行ける。行きたいときにいつでもな」
とのことだった。

フランス人のばあさん2人組は、もんのすごい量のパンをほおばっていた。
しかもレメデイーの滴をスポイトですべての食べものに垂らしながら食っていた。見た目も行為も魔女みたいで、思わず見入ってしまった。世の中にはいろいろな人がいる。だから面白い。

9:30 出発。台北駅へ行ってみよう。

15年前、小さな士林美食市のようだった、猥雑で活気あるフードコートは、完全におきれいな、つまらないレストラン街に変わっていた。あるのはカレーや天ぷら、とんかつなど、日本食ばかりだった。
1階のおみやげ屋は、まるで品川駅の駅ナカのようだ。

博多から来たというチーズケーキ屋には朝から長蛇の列ができていた。
源吉兆庵だってある。
日本のもの、が、かなりかっちょいいと感じるのかもしれない。そこらじゅうに「日式」がある。

表示が日本語のまま、日本にあるまま、というのも多い。それも「本物」っぽくて、かっちょいいのかもしれない。

日本では見たことのない「つじり」も出店していた。

日本各地の銘菓と同様に、「よくもらう外国土産」なお菓子というものは山ほどあって、例えばワイハのマカダミアナッツチョコレートとか、ヨーロッパのノイハウスのチョコレートとか、アメリカのハーシーズチョコレートとか、あれ、おかしいな、チョコレートばっかりじゃないか、という、大して美味くもないアレであるが、わたしが世界のお菓子土産でいちばん好きなのが、ここ台湾土産の鳳梨酥(「オンライソー」=パイナップルケーキ)だ。
ケーキ、というか、パイというか、一口大の、四角い、カロリーメイトに似た、イギリスのショートブレッドのような、真中にパイナップルと冬瓜でできた、固いジャム餡が入っている菓子である。甘いものがあまり得意でないわたしでも、もらって「やったー!」となる、土産物だ。しっかりずっしりとした焼き菓子が好きなのだ。
ちなみに、他に好きなのは、インドネシアやシンガポールでよく売っている、「シュリンプチップス」。油で揚げると膨らむアレではなく、形はカルビーかっぱえびせんのような塩味の菓子である。

薄いパイ生地のようなものが何重にもなっていて、歯ざわりがいい。

鳳梨酥は、台北駅の土産菓子屋でも、いっくらでも売っている。それぞれ店のこだわりがあり、味も少しずつ違う。そこで、試しに2つの店で買ってみた。

1個だいたい50円くらい。右の大きい方は卵がたっぷりで中の餡もパイナップル100%という、200円近い高級品。食べながら歩く。
個人的には、卵たっぷりじゃない、中の餡もパイナップル100%じゃない、安いもののほうがおいしいと思う。
冬瓜が混ざった餡のほうが、味も食感も穏やかになる。

台湾国鉄の路線図はわかりやすい。ひたすら沿岸部を行くのだ。
ぐるりと列車に乗ったら、1日でまわれるのだろうか。北部にしか行ったことがないので、南のほうには興味がある。行ってみたいなあ。

西門まで歩こう。

アジアは看板やネオンがいい。
ヨーロッパの街にはない、目にうるさい感じ、も、アジアらしさだ。

たまたま通りかかった胡椒餅屋で、1個買ってみた。
胡椒餅というものを初めて食べる。

中はねぎ、豚肉のミンチ。胡椒がかなりきいていて辛い。そして熱い。
インドのナンのように、釜の内側に貼りつけて焼くのが面白い。釜のまわりが木でできているのは珍しい。外は胡麻がついていてパリッパリ、中はジューシー。これは美味い!

調子に乗ってきたので、にらの水煎包も買い食いする。
にらとねぎと春雨、肉は入っていない、安い具材なのに、どうしてこんなにおいしいのだろう。
先ほどの胡椒餅もそうだったが、具がかなりいっぱい入っているのがいい。上手に包むよなあ、と感心する。
こうやってちょこちょこ買い食いしているのが、とにかく楽しい。

街を歩いていると、パン屋がやたらと目につく。
中華系の人のつくるパンが、なんとなくおいしくなさそうなのは(そして実際、今まで食べた中で、中国系のパンはどれもまずかった)、なぜだろう。なんだかパサパサしていて、食べていて息苦しい気がする。
肉まんや胡椒餅はおいしいのに。似ているのに、なぜだろう。

川原徹也は誰だ!?
眼鏡屋の広告塔なのだが、「日本型男」なのだが、知らないぞ。
ネットで調べてみると、同じことを考えている人が大勢いた。どうやらモデルさんらしい。

繁体字は素晴らしい。
何が書いてあるか、台湾はなんとなく意味がわかることが多い。大陸中国の簡体字だとこうはいかない。
簡体字という発想自体が気に入らないのだ。中国共産党の胡散臭さが表れている気がする。

総統府の周囲の雰囲気が、ずいぶんやわらいだ。
前は、周囲で停車禁止、撮影禁止、と、とてもピリピリした空気だったが、今日はそんなふうに感じなかった。
時代は変わる。たった15年で変わるのだ。

タクシーで永康街にある小籠包の名店へ行ってみると、

さすがの状況だった。ツアー客、個人客、地元客でごった返していた。
明日の朝いちばんで来ることにしよう。

これまた有名なかき氷屋で、いちごのかき氷を食べる。
冬場にマンゴーのかき氷はもちろんない。
日本のいちごよりも粒が小さくて、ピンク色をしているのが、山盛りになっている。
氷の肌理がとにかく細かい。舌触りが素晴らしく良い。寒いけれど完食。

永康街のあたりは、古い、昭和のような街並みと、新しいシャレオツものとが渾然一体となっていて、歩いて楽しい地域だ。

「日式」、つまり日本風のものを見つけると、なんとなく嬉しいような面白いような気分になり、ついつい写真を撮る。
食べものに関しては、天ぷらや寿司だけでなく、「石狩鍋」なんていうコアなものまで輸入されてきている。「珍品」と書かれているとおり、結構マニアックだ。

シャレオツなカフェバーのような店の軒先にも、お供えの台が出されて、線香と菓子が乗っている、というのは面白い。若い人でも寺院で線香をガンガン供えるし、おしゃれファッションブティックでもお札が貼られていたりする。日本の若い人たちもパワースポットなどを好むが、台湾の若者はもっと古風な信仰心を持っている。
信仰心というものをかけらも持ち合わせないわたしからすると、どちらも興味深くて、のぞき見したくなる。

おいしそうかも、と思い、入ってみる。
いろいろな種類の焼き肉を売る店で昼ごはんにする。
おそらく飯の上に肉が盛り合わせてあるのだろう、というものを注文。


想像通り、飯に支那竹、青菜の炒め物、鴨肉のローストが餡かけになっているもの、が盛ってある。
悪くはなかったが、熱々ではないのがもったいない。
野菜の中でいちばん好きなのは筍、というくらい、たけのこの類が、気が狂うほど好きなので、肉は食べきれずとも支那竹は残さず。

タピオカの粒が入っているミルクティーや、ジュースなどを売る店が、台湾は多い。この黄色い店のようにチェーン展開していることもある。これがまた美味い。

「すごくかわいい」と噂にきいていた、台湾セブンイレブンのキャラクター、OPEN小將(オープンちゃん)が本当にかわいい。
グッズも店内で売っていた。
見てみると電通が代理店らしい。日本でもこのキャラクターで売り込んでほしいのだが、いかんせん日本のセブン&アイホールディングスにはnanacoという雌のキリンがいる。残念なことだ。
日本語版Wikipediaさんにも項目が立つくらい詳細な設定があるので、必見である。

台北101近くにあるシャレオツビル・誠品書店に行こう……と地下鉄に乗ったらまたしてもOPENちゃんが!!
日本の観光PRラッピング車両だった。

ピギャーッ! 頭の扇が全開になっている!!
OPENちゃんはテンションがアゲアゲになると、頭の虹色扇が開くのだ! そして餅肌が自慢なのだ!!

「統一」という文字が、なんとなく北朝鮮を彷彿とさせる。変な感じ。
日本で見慣れた阪急百貨店も、一味違って見える。

18:00 美容室で台湾式洗髪をしよう。
700円ほどで、完璧なシャンプー&ブローをしてもらえるのが台湾の美容室だ。
座った姿勢でのシャンプーも有名。毎日通いたいくらい気持ちがいい。
そしてわたしのものすごいクセ毛でも、お嬢様カールにしてもらえるくらい、仕事が丁寧で技術もある。
何しろ一所懸命にやってくれる。思わず、
「すごーい! すばらしい!」
と拍手したら、照れていた。

台湾の接客は、とても丁寧である。
大陸中国の、近代化しても変わらぬつっけんどんさに比べると驚天動地、という感がある。
日本以上に礼儀正しい接客をするので、日本人からしても照れくさいほどだ。
最敬礼でお見送り、かわいい微笑、など、とても好ましい。誰もがにこにこしている。
韓国の観光地だと、「チッ見るだけかよ、買わねえのかよ!」というのを露骨に顔に出すお姉さんが多いが、台北は違う。買っても買わなくても同じように優しい。

多くの店員が、ちょっとずつ日本語を話す。
セブンイレブンだと「袋いりますか?」「ありがとうございましたー」くらい朝飯前だ。
日本語の補習校もよく目にするので、外国語の中ではかなり人気なのかもしれない。

19:00 忠孝敦化あたりで夕飯を食べよう。
裏通りを歩いていたら、偶然出会った、まさかの有名小籠包屋・忠孝敦化支店!

ここも大混雑だが、待つスペースが本店と違って広々としていて、椅子もある。

番号札と、メニューを渡される。何を食べようか考えながら待っていると、番号で呼ばれる仕組み。

繁体字は本当にありがたい。だいたいメニューが読める。
伝票に印をつけながら待っていると、15分ほどで通された。

従業員の顔が、みんないい。名店のプライドだけでなく、思慮深そうな顔で仕事をしている。大混雑の広い店内で、チャキチャキ働いているのが気持ちいい。
外国人観光客の相手も面倒がらずにする。日本人だとわかれば、店内でいちばん日本語ができる人を呼んでくる。とにかくよく動く。媚びないし馴れ馴れしくもないが愛想はいい。親切だ。
働きやすい職場なのかもな、と考えながら料理を待つ。
「小籠包は熱いので、ごゆっくりどうぞ」
「ご注文はすべておそろいですか?」
なんていう、結構高度な日本語を話していたので、
「すごーく、完璧な日本語!」
とほめると、にこり、と笑ってうなずいた。自信あるんだな。

台湾ビール、きゅうりの冷菜、空心菜の炒め物から始める。青菜の炒め物は世界でいちばん美味い食べものの1つだ。
酸辣湯も食べて、

蟹の小籠包も食べたが、普通のシンプルな小籠包がいちばんうまい。

写真を見て食べたくなった、立ち上がっている焼売。
「海老焼売もください」
と言うと、
「たぶん、食べきれないので、半分にしましょうか?」
と提言された。
本来なら10個なのを5個にしてくれたのだ。
そんなこともできるのか!
まったくもってお姉さんの言うとおりで、指示に従って大正解だったのだが、しかし店としてはする必要のない助言なわけで、食べきれずとも売ったほうが儲けになるわけで、でも半分にしましょうか、と言う、というのは、かっこいい。
客に食べきれるだけのものをおいしく食べさせたい、と思ってくれているような気になる。
よほどいい接客訓練を受けているんじゃなかろうか、とさえ思えてくる。

大変、満足。

周囲は一大ナイトスポットだった。この辺は歩いたことがない。散歩してみよう。

30歩圏内にセブンイレブンとファミリーマートがあるというのはアリなのだろうか。

22:30 24時間営業のスーパーマーケットを探してうろついてからホテルへ戻ろうとすると、高校生の大群と遭遇した。そうか、ちょうど予備校が終わる時間なのだ。

台湾の中高生はジャージのまま街をうろついているのが面白い。
しかもかなり派手なジャージが多い。ピンクやグリーン、スカイブルーなどなど、「ミュージカル・テニスの王子様」のようである。校名入りジャージ&校名入りバッグだ。

台湾のレシートには「台湾統一発票」という宝くじがついているのも有名。
店にきっちり納税させるために導入されたらしい。この宝くじを募金できるようになっている箱が、だいたいの店に置かれているが、かなりの枚数のレシートが入っている。これを全部、当選しているかチェックするのは大変な労働だろう。

台湾でも大陸中国でも、中国語圏において、日本語接続詞の「の」は、ほぼ完全に定着した。テレビを見ていても、ここ数年、ごく自然に使われるようになった。
英語でいう「of」は、わかりやすいし、1文字で表現しやすいし、使いやすかったのかもしれない。





3日目。
霧雨の朝。
08:30 ヤクルトだけ飲みに、朝食会場へ行く。
アジア各国で売られているヤクルトは、日本のものよりも容量が大きい。日本のも、この大きさになってくれないだろうか。

龍山寺界隈を歩こう。

そしてお粥を食べよう。

小さくてぼろい店だけれど、行きたかった肉粥屋へたどり着く。
紅焼肉(揚げた叉焼)やソーセージ、豚の心臓と一緒に、だし粥を食べる。
米がつぶれていなくて、日本の粥のようだ。これ以上でも以下でもない塩加減がおいしい。
どの皿にもたっぷりの生姜がせん切りになって盛ってある。

15年前はそこらじゅうにあった檳榔(タバコのような、興奮作用のある嗜好品)屋も、台北市内ではあまり見かけなくなったし地味になった。セクシーな服を着た売り子のお姉さんもいない。
台北市では規制されるようになった、という記事を読んだことがあるが、本当だろうか。

血反吐のようで、初めて見たときにはびっくりした、こういう、檳榔を噛んだ後の吐き跡も、久々に見た。昔はそこらじゅうにあったのに。
公道に吐くと罰金刑になるらしい。

ホグワーツ魔法学校かというくらい広大な小学校があった。記念碑を見ると、日本統治下につくられた最初の小学校の1つらしい。向こうの端が見えない。

表通りに面した回廊には、児童のものと思われる習字が展示されていた。
これで6年生か。日本の6年のほうがうまいな。漢字の国の子どもと大差ないってことがわかった。

今日も胡椒餅を食べてみよう。

日本人観光客が感動しながら写真を撮っていたが、いやいや、昨日の胡椒餅のほうがおいしい。
皮が厚すぎ、中の肉がひき肉、味が雑。八角がききすぎていて、肝心の味が逆にぼやける。イマイチ。
昨日の店は、ひき肉ではなくて、たたいてある小間肉、味つけも絶妙だった。

京都の錦市場のような市場があった。
魚介、青果、なんでもある。

1月にある総統選の選挙活動が盛んだった。
なんせ今回の選挙は、初の女性総統誕生か!? というにぎやかなものだ。

いや、台湾の総統選は毎回、世界の話題になるにぎやかさだ。
テレビCM、ビルの巨大ポスター、なんでもアリの一大祭典なのだ。毎回華やかな選挙汚職も話題になる。

そうだ、北投温泉へ行こう。

地下鉄の切符は、プラスチックでできたトークン。日本のSUICAと同様、ICチップが内蔵されていて、タッチすると改札が開く。運賃は驚くほど安い。

地下鉄に乗りながら思う。
ヨーロッパの電車やバスで、若者が年長者に席を譲る際、若者は「どうぞどうぞ」なんて偽善的な顔をしないし、年長者も「すみませんねえありがとうねえ」な どと卑屈な笑みを見せたりしない。お互いに、「当然だ」ということのそれ以上でも以下でもない顔をして席を立ったり座ったりする。するりとスマートに立つし、当然のように座る。
これは、儒教の教えが浸み込んだ韓国や、ここ台湾でもまったく同様である。
お互いに、相手の顔も見ず、ヘラヘラした微笑も浮かべず、無表情に、クールに、すっと立つ。「どうぞ」とも言わない。でも、多くの若者が、混んでいる車内で、駅ごとに、老人が近くに立っていないか、ちらり、と周囲を確かめる。
かっこいい。他人同士なのに阿吽の呼吸がある。社会的常識として、このマナーが浸透している。
日本の、車内の、優先席に座りながらタヌキ寝入りしていたり気づかぬていで携帯電話を見つめているのも腹立たしいし、やたらにニカニカしながら恩着せがましく席を譲ったり「いえいえ次で降りますからハイ大丈夫ありがとうございますねえ」などと卑屈に断ったりするのも気色悪くて吐き気がする。若者は無表情に 譲りゃあいいんだ。そしてじじいとばばあはとっとと座れ。

ホームに大きな液晶テレビがあるのは、韓国やシンガポールと同様。日本のホームにはない。
車内の液晶画面も日本の電車より大きい。進んでるー。

北投温泉までは地下鉄で30分ほど。

中国語でプラットホームのことを「月台」というのは、なんだかかっちょいい。
調べてみると、「古代中国で月見をするための出っ張った台が直方体だったため、形状の似ているプラットホームがこう呼ばれるようになった」というのが一説にあるらしい。

台湾は温泉が豊富だが、温泉に入浴するという文化はもともとなかったといわれる。
日本が統治するようになり、日本人によって温泉文化が持ち込まれた。

去年オープンした、新北投の日系旅館へ行ってみる。
石川の超有名旅館が台湾に新館を建てたのだ。
オープンしたての頃は、仲居さんたちは皆、日本で研修を積んだ、など、テレビのドキュメンタリーでも話題となっていた。
入るとなるほど、ほぼ全員が日本語を話す。恰好は着物。日本名の名札をそれぞれつけている。
台湾の「日式」ブームの真骨頂ともいえるだろう。一歩入った館内は完全に日本だった。
日帰り入浴は3000円ほど。日本人のお兄さんたちは「高けーな」とつぶやいていたけれど、まあ、1泊したら5万ほどですしね、そんなもんじゃないですかね。
露天風呂がないのは、ちょっとつまらない。
今、この年にむざむざ放射能浴びているというのもアレだが、ラジウム泉である。

アメニティはAVEDA、化粧品は資生堂、脱衣所にある巨大液晶テレビはパナソニック、エステはソシエ。日本のトップブランドにこだわっている感じ満載だった。
ここがどこか、わからなくなる。

風呂上がりに新聞を読んでいると、こんな記事が。
イルカでも、若くして死ぬと「夭折」と言うのか。面白い。

すぐ向かいには、日本軍の旧館があって、今は温泉資料館になっている。レンガ造りの素敵な建物だ。

街を行く仲居さん。まったくもって日本の温泉街のよう。

16:00 刺繍の布鞋(ブーシエ)を探しに西門を歩こう。

商店街の一角に店を発見。
サイズくらいなら日本語が通じるお姉さん店員がいた。
刺繍のセンスは北京の老舗のほうが上だが、高いものではないし、記念なので1足購入。

ホテルの隣のパン屋には「台北市パイナップルケーキ大会1位受賞!」という看板が出ていたので、試しに食べてみたら、悪くなかった。これを今回の土産用に買う。

18:00 夕飯は、

網走監獄ののれんがかかった厨房の店で!
この店、お兄さんが一人で調理、接客、会計、と、店を切り盛りしていた。
無表情のまるでYAKUZAな兄さん、北野映画に出てきそうな剃り込み入った兄さん、でも手際は超いい。わ、わたしもこの店で働きたい!

水餃子、小籠包、ソーセージなどを注文。カリッと焼いたソーセージに添えられた揚げにんにくを一緒に食べると美味い!
空心菜の炒め物とビールを喰らう。何の文句もない。

小籠包もまずまずだったが、やはり昨晩のものには勝てない。
小籠包の良さは、汁の多さとか肉の味ではない。皮の薄さの食感だと思う。
唇で皮に触れた段階で善し悪しが決まるのではなかろうか。
薄ければ薄いほど、繊細で美味に感じる。

士林夜市へ、やっぱり行こう。

あいかわらずのコミケ状態。街は大賑わいだ。
ついおとといだかに、一大屋台街だった美食市だけ新しくなった。ニュースでも盛んに報道されていた。
今まで地上一面にあった店舗がすべて、新しい地下街に集められたのだという。

行ってみると、こんな感じになっていた。
これってどうなんだろうか。地下へ下りる前から不安がよぎる。
なんとなく、失敗に見える。
衛生局がうるさいシンガポールですら、地下に集めるなんてことはしなかったのだ。わたしの想像でしかないが、それはおそらく、開放的なところで食べるからこその屋台なのだ、という思いもあったのではなかろうか。

地下は、まるでデパ地下だった。天井がせせこましい。ダクトが今ひとつ機能していないのか、煙がモンモンとこもっている。なんとなくおいしくなさそうな雰囲気が漂っていた。
これでは、わたしはもう来ないだろう。ここで食事をしようとは思えない。

なんとなく憮然としながら買った胡椒餅は、うまかった!
3回食べた中で最高。皮は薄くパリッと。肉は塊肉をたたいたもの。胡椒は控えめ。美味なり。

一周サラッと冷やかして、戻ってくる。
24時間やっているカルフールと、夜の西門へ行こう。

カルフールは巨大だった。

ニトリも入っていた。

かばんに入りきるかドキドキしながら、がらくたを買い漁る。

「寿司味」のポテトチップスは、見たら買うしかないだろう。

烏龍茶で香りをつけた、台湾のお茶うけ菓子「茶梅」や、漢方コスメの石鹸、台湾コスメの代表・シートパックなどをカゴへ放り込んでいく。ほとんどは買っただけで満足するので、よし、あとは人に押しつけるだけである。

自分のためには、訪れた国々で買うことにしている料理雑誌くらいでいい。
本屋で見つけたカードのこうもり柄は、中華圏では吉祥を呼ぶ動物である。西洋なら悪の象徴であるこうもりも、それから竜も、中国では幸を呼ぶキャラクターなのが面白い。

西門は21時を過ぎても大混雑。ほとんどの店が開いている。

あっ! 昨日までクリスマスムードだったセブンイレブンのOPENちゃんが、新春モードに早変わりしている。
このシール欲しいぞ!

日記を書いて、00:15 就寝。



4日目。

06:15 表へ出ると、台北101が朝靄の向こうに見えた。
よし、豆漿を飲みに行こう。
豆漿(「トウチアン」)、つまり豆乳は、中華圏の朝食の定番だ。これは大陸中国でも台湾でも変わらない。
市場のようなスーパーマーケットの2Fにある店は、早朝から開いている。

入口がわからず、少し迷ったが、たどり着くと朝から大にぎわい。わたしのあとからも続々と客が入ってくる。
メニューが手元になかったので、書こうかな、と手帳を取り出したら、店員のお姉さんがスラリと日本語で話しかけてきた。ありがたい。

豆漿、油条(「ヨウティヤオ」=カリカリ揚げパン)、

薄焼餅に卵をはさんだやつ、を注文する。

我が人生ナンバー1の豆乳だった。温かい豆乳にほんのりと砂糖が加えてあって、あたたまる。今朝もひんやりと寒いので、体にしみるようだ。
パリッパリの油条も、あんなに大量のラードで揚げているのに、全然油っこくない。
卵入りの焼餅は、うっすらと塩味で優しい味がした。おいしい。
窓際の席に座り、他の客を見ながら食べる。
店で食べる人は、あまり多くなく、だいたいが出勤途中なのか、持ち帰っていた。

裏通りを歩くと、高校前には、これまたたくさんの朝食屋があり、生徒や近所の人たちが朝食をよく買っていた。
今の日本の「食育」では、まるで家庭で調理したものが完璧な理想のようにもてはやされがちで気色悪いが、そんなのは井の中の蛙のごときものでしかない。3食外食だろうと、3食買い食いだろうと、そんなことは関係ない。何を食べるか、と、誰と食べるか、にこそ論点はあるのだ。人はお美しいもののみ食べるわけではない。たまに食べるジャンクフードはうまいし、険悪な人間関係の下囲む食卓は砂を噛むようにまずいのだ。食というものには星の数ほど選択肢があり、それは素晴らしいことである……と、この論題については、言いたいことがスマートにまとまらない。もう少し冷静に出直してこよう。

8:30 お迎えが来る。マイクロバスに詰め込まれる。
往路と同じおじさんガイドだった。

民芸品店に連れ込まれたが、用はない。抜け出してセブンイレブンで時間をつぶす。

すると、「天競鏖鋒」という物語のミニキャラグッズがもらえるよ、的な看板が出ていた。
昨日テレビでCMしていた、ファンタジー人形劇のキャラクターだ!!

台湾は人形劇のシリーズがとても豊富で、耽美的なキャラがいっぱいいる。

日本でも翻訳して放送されればいいのに……と願いたくなるほどファンタジーな幻想人形劇なのだ。絶対人気出ると思うんだけどなあ。

他の乗客は朝早いこともあり寝ていた。空港に着くまでの間、おじさんガイドと話し込む。
おじさんは師範大を出たというインテリゲンチャで、しかしなぜ、もう結構な歳なのにガイドなんて安月給な仕事をしているのか、波乱万丈な人生がありそうな人だった。
思想もなかなか激烈で面白い。
政治的な話に乗ってくるかな、どうかな、と思いながら、話題を総統選に振ってみた。
「台湾はテレビや街頭でずいぶん派手な選挙活動をしますよね。日本とは違う」
するとおじさんは持論をふるってくれた。
「今回の総統選は現職の国民党・馬氏をつぶすチャンスだ」
「自分は蔡氏(女性候補)を推している」
「国民党の支持者は既得権益者(と、おじさんは日本語で言った)ばかりだ。台湾の既得権益者は日本よりすごいぞ。街で平日の昼間からフラフラしているじいさんたちを見なさい。あれは全部、定年した公務員や教員だ。台湾の公務員は退職金を公務員だけのための特別な利率の基金に預けることで、実際の退職金の何十倍も儲けられるのさ。だからあいつらはフラフラとしていられるんだ。そういう奴らが国民党を支持しているからね。誰も、甘受している権益を失いたくはない。だから、それをひっくり返すのは並大抵じゃないさ」
わたしは口をつぐむしかない。頭をかきながら、
「蔡さんの勝ち目はありますか?」
ときいてみた。
「五分五分だね。蔡氏の支持者は個人支持者ばかりだが、よく戦っているよ。あなたは、赤い豚の貯金箱を見たかい?」
「貯金箱、ですか?」
「ニュースでもやっているよ。いわゆる豚の貯金箱だ。これに入る金は、政治献金として帳簿に載せなくてもいいことになっているんだ。蔡氏の選挙資金には、こいつが大量に集まっている。硬貨がつまっているんじゃないよ、紙幣をぎゅうぎゅうに豚の貯金箱へ詰め込んで、送るのさ」
「ガイドさんも送りましたか?」
「もちろん。馬氏の選挙資金は膨大だ。国民党は一大政党だからね。あっちはテレビでも広告でも宣伝費を湯水のように使える。でも、蔡氏の資金は、本物の、支持者たちの金だよ。こいつが台湾の政治を動かすんだ」
おじさんと話をしながら、わたしはちょっと感激していた。この、中華民国で、これほど国民党を批判する内容の話を、平然とできるようになるとは。
「時代は変わりましたね。国民党の話ができるなんて」
するとおじさんも笑って言った。
「まったくだね。10年前なら、国民党を批判したら国家反逆罪で死刑だよ。国民党といえば……」
「蔣介石! って感じですもんね」
「そう。中華民国の父だ。批判なんて許されるわけがなかった。台湾は独立すべきだ、なんて言ったら国家反逆罪だ」
そう。台湾こそ独立した「中国」であり、毛沢東の「中華人民共和国」が反乱分子なのだ。大陸中国は台湾に併合されこそすれ、台湾が自ら大陸中国から「独立」することなどあり得なかった。「台湾独立」という思想はそれ自体が国家反逆思想だったのだ。
「それが今では、一党独裁でなくなって、独立という選択肢も公言できて、総統選に他党が立候補までできるようになったんだから」
こういうことを話せるのが、言論思想の自由ってやつだよな。
政治的に複雑な国や地域は世界中に多いが、そのことについて自分の考えを言える、というのは自由への非常に大きな一歩だ。世界には一市民が意見を言うことにすら圧力のかかることがまだまだ存在している。台湾ですら10年前までそうだったのだ。

10:45 桃園空港着。すらりとチェックイン。

免税店はきれいだが、天井が低くて窓がないため、閉塞感のある空港。

排骨飯を食べる。
空港の食事にしてはうまかったが、そこはかとなく漂う味気なさは、やはりぬぐえなかった。なんで空港のごはんってまずいんだろう。枝豆はごま油がまぶしてあり、日本のものとは一味違う。

そしてキャセイパシフィックの機内食はおいしくない。
嬉しいのは台北からの便ならパイナップルケーキがつくことくらいだ。

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